【遺留分侵害額請求】生前の多額の引出金を考慮した遺留分侵害額について早期の支払いを受けた事案
相談前
- ご相談者様は、お父様が亡くなり、お父様の後妻(実母ではない)に全財産を相続させる遺言があるとのことでした。
- お父様の後妻とはほとんど面識がなく、心情的に直接遺留分侵害額の交渉をしたくないということで、代理人として交渉してほしいとのことでした。
相談後
相続財産調査と無断引出・使途不明金
まずは後妻に対し,相続財産の開示を求め,一定の開示を受けました。
しかしながら,過去の通帳写しを整理したところ、お父様がご自身で使用できない状態とななったと思われるころから、生活費としてはかなり高額な出金や後妻への送金の履歴が発見されました。
これらの金額を整理して一覧化し,不相当な部分について,遺留分算定の基礎に組み入れたうえで,遺留分侵害額の請求を行いました。
疎遠な相手方と早期解決
ご依頼者様は,相手方とほとんど面識がなく,ご自身のお仕事が忙しいなか,自ら接触することが心情的にも難しいということでした。
代理人として遺留分侵害額の通知を行うと,相手方にも代理人が就任し,結果的に,ご依頼から3か月にて、請求額の9割の解決金にて合意することができました。
弁護士のコメント
相続財産調査
被相続人と疎遠となってしまっていた相続人の側に立つと,相続財産に全く見当がつかない,という事態が生じます。
このような場合においても,可能な限り調査をすることに加え,被相続人と関係が深い相手方に開示を求めるということも方法論のひとつとしてありえます。
しかしながら,開示をするにあたって,相手方からは相手方に不利な情報が出てこない可能性もありますので,開示を受けた内容を検討・整理して,さらに不明点について説明・開示を求めたり,開示内容から合理的に推認できる内容を調査していくことが必要です。
使途不明金・無断引出事案
すべてを相続させるという遺言がある事案では,これに加えて,使途不明金・無断引出があるケースも一定数見られます。
遺留分侵害額請求の算定の基礎となる預貯金は,亡くなった時点を基礎とするため,生前に引出行為がなされていると,遺留分侵害額自体としては低い金額となってしまいます。
しかしながら,使途不明金・無断引出が,被相続人から返還請求できる権利があったということがいえれば,相続財産として考慮して請求することが可能であるといえます。
そのため,使途不明金・無断引出が疑われる事案においては,過去数年分の取引履歴を整理してみることが重要と言えます。
疎遠な相手方との交渉
相手とあまり面識がないというケースでは,自ら接触をすることが心情的に難しいというご相談を受けることがよくあります。
このようなケースでは,代理人から接触をするということにもメリットがあると思われますので,ご相談いただけますと幸いです。